浅田家

元カノに会った。もちろん夢の中でだ。

なんてことない話をしていた。倉庫のような所にいた気がする。

友人が悪役だったような気もする。大事なところで裏切る現実じゃ考えられない配役だった。

 


「マルチ始めたら別れるからね」

そう伝えて1年後、彼女はマルチを始めた。

笑顔がとても魅力的で好きになった。

大切なぬいぐるみに名前を付けていた。家族想いの可愛いコだった。

別れ際に「あなたのおかげで夢を追いかけようと思えた。出逢ってなかったらずっと前の仕事をしていた。ありがとう」と言われた。

ハッキリ言って僕はズルかった。

ちゃんと向き合うべきだった。しかしそうするには彼女は臆病で、僕は無知だった。

涙が止まらなかった。

そういえば…離婚したときも泣かなかったのにな。思い返せば恋人と別れて泣かなかったのは離婚したときだけだ。

 


ゆっくり朝ごはんを作って少し慌てて食べた。バターで炒めたアスパラガスは水分を失いかけていた。明日の分はパサパサかもしれない。

 


土砂降りの雨が降っていた。

女子高生が傘をさしてスマホで漫画を読みながら歩いていた。

背中がびしょびしょに濡れていた。

 


営業は忙しかった。最初から最後まで働いていた。嬉しい。

お客様には感じの良さが大切だと思った。

自分の髪のことをちゃんと考えてくれるから嬉しいと言われて嬉しかった。

やらないでと言ったことをやる後輩にたいして分かってもらえるように言葉を選んだ。

なにが嫌だったのかをハッキリ伝えて同じことをしないで欲しいと言った。

怒っても伝わらなければ意味がないし、同じミスをするのは先輩のせいだと僕は思っている。

ミスされたことは取り消せないけど、どう怒るかは僕が選べる。

 


カツ丼がどうしても食べたくなって1番にいったが開いてなかった。

スーパーに寄ってレタスチャーハンを勧めるポップを見たのでレタスを買った。

見切り品の種無し葡萄をたべながら帰った。喉が乾く甘さだった。安い皮の味がした。

レタスチャーハンは美味しく出来た。

ごま油は引かずにご飯に絡めるのがコツらしい。

 


浅田家を観た。

コメディかと思ったら被災地の話も出てきて、ぐっときてしまった。とても良い映画だった。

 


誰かのいない空白を埋めるのは記憶しかない。

その通りだ。