どら焼きが食べたい

どら焼きが食べたい


深夜2時半の大通りに誰もいなかった

街頭に照らされた雨がオレンジ色に光っていた

「タクシーは信号を渡ってから拾うと帰りやすいよ」

その通りだった

 

あなたがいなくなった部屋はとても静かで

ものに当たる音も

何度も繰り返されるCMも

今はもう聞こえない

とても怖かった日々も

家に帰りたくなかった夜も

懐かしいとさえ思う

ひとりになるのはときどきそれ以上に辛い

 

孤独がなんでも食べてくれるのなら

どら焼きを食べさせてあげたい

暖かいコーヒーと一緒に

誰かの不在について話をしたい


「タクシーは信号を渡ってから拾うといいよ」

確かにその通りだった