自転車に乗れたときのこと

 


前半はほぼノルウェイの森です。

蛍が放されて、漂う描写が蛍の方が豊かに描かれています。

僕は蛍の方の描写がとても好きで、この作品の骨組みでもあることばと共に心に残っています。


死は生の一部として存在する

 


あらすじ

 


突撃隊と呼ばれる同室人が体調を崩した。

僕は介抱してやり、そのお礼に恋人にと蛍を貰う。

だが僕はその蛍を彼女に渡すことは出来ないので屋上から放してやることにする。


もう戻ってこない時間を蛍の微かな光が物語っているかのような話。

ノルウェイの森には緑がいるので生きることへの回復の部分も描かれていますが、蛍に緑は出てきません。ここもめちゃくちゃ面白いのでその辺はまたノルウェイの森を読んでから書きますね。


蛍が消えてしまったあとでも、その光の軌跡は僕の中に長く留まっていた。目を閉じた厚い闇の中を、そのささやかな光は、まるで行き場を失った魂のように、いつまでもさまよいつづけていた

 

僕は何度もそんな闇の中にそっと手を伸ばしてみた。指には何も触れなかった。その小さな光は、いつも僕の指のほんの少し先にあった


うまくいかないとき、辛い今から逃げたくなってときどき昔のことを思いだしてはそこに手を伸ばしてみます。だけどもちろん指にはなにも触れません。あるのは今ここにいる僕だけです。

思い出は心を強く締め付けることがあります。

もうあの頃には戻れないということを教えてくれます。

それがあるから救われることだってあります。

もう戻れない思い出が、心を温めてくれることも。


今なにか思い出してみると自転車に初めて乗れたときのことを思い出しました。

何度もこけて、いつの間にか乗れるようになっていた自転車。

思い出すのは、乗れた喜びよりも側で見ててくれた母親の顔でした。


ふと思い出してみるのもいいものですね。

今度実家にケーキ買って帰ろう。

あなたの小さな思い出はなんですか?

 

 

 

rikichan