アイロンのある風景
アイロンのある風景
あらすじ
小さな町に順子は、サーファーでアマチュア・バンドのギタリストである啓介と同棲している。彼女の仕事はコンビニの店員だ。啓介は私立大学の学生だが学校にはほとんど通っていない。
ある晩、ふたりの知り合いの三宅さんから電話がかかる。三宅さんは焚き火をするのがとても上手い。「流木がけっこうぎょうさんあるねん。大きいやつができるで。出てこれるか?」この「大きいやつ」というのは焚き火のことである。順子は啓介と共に浜に向かい、三宅さんと3人で焚き火をする。
死を意識しながら生きようとしている人々の姿を描く。
ある風景
あなたには言葉ではうまく説明がつかないが意味を持つ風景はありますか?
あると答えた方はこの話がきっと気に入ると思います。
僕はあります。
中学生の頃、塾が終わった後で、大雨の中人を待っていて閉まった美容院の屋根の下からみた駅の風景です。
そこにはロータリーがあって、塾の反対側に美容院はありました。
塾を終えた子どもを迎えにきた車が目の前を何台も通り過ぎていきました。
風が吹いていて、葉をつけていない木の枝を揺らしていました。
ウォークマンからはMAROON5のShe will be lovedが流れていました。
とても寒くて、時間が早く過ぎて欲しいと思っていました。
この風景から思い出されることは、いつまでも来られなかったその人のことと、いつどのタイミングが最期になるかは選べないこともあるということです。
大切な人に当たり前に会えることの喜びを忘れそうなとき、又は忘れた後で思い出させてくれます。
その日から随分遠くまできましたが、僕の心を温めてくれる大切な風景のひとつです。
rikichan